VPNチェーン(カスケード)のメリット・デメリット
VPNチェーン(カスケード)は、複数のVPNサーバーを連続して経由する方法であり、セキュリティやプライバシーの強化に役立ちます。しかし、この手法にはメリットとデメリットの両方があります。
VPNチェーンのメリット
プライバシーの向上
通常のVPNでもインターネットトラフィックはVPNサーバーを経由するため、ユーザーのIPアドレスが隠され、プライバシーが向上します。VPNチェーンを使用することで、トラフィックが複数のサーバーを経由し、その都度IPアドレスが変わるため、さらに追跡が難しくなります。
各サーバーでIPアドレスが変更されるため、個人を特定するのがより困難になります。
セキュリティの強化
通常のVPNは単一のVPNサーバーでトラフィックを暗号化します。これにより、データがインターネット上を安全に移動することができます。VPNチェーンでは、トラフィックが各VPNサーバーで再暗号化されます。
複数の暗号化層を通過することで、データの盗聴や改ざんのリスクがさらに減少します。中間者攻撃(MITM)などの攻撃に対して、追加の防御層が提供されるため、セキュリティが強化されます。
地理的制約の回避
通常のVPNでも、異なる国のサーバーに接続することで、地理的制約を回避できます。VPNチェーンでは、複数の国のサーバーを経由するため、検閲やアクセス制限を回避する能力がさらに高まります。
例えば中国でアクセスが制限されているコンテンツに対しても、複数のサーバーを経由することで、より確実にアクセスできるようになります。
VPNチェーンのデメリット
通信速度の低下
VPNチェーンを使用することで、各サーバーを経由するたびに通信の遅延が発生します。特に、複数のサーバーを経由する場合、遅延が累積し、全体の通信速度が低下することがあります。
ストリーミングやオンラインゲームなど、リアルタイム性が求められる用途には適していません。
設定が複雑
VPNチェーンの設定は、単一のVPN接続に比べて複雑です。各サーバーの接続設定を適切に行い、ルーティングテーブルを正しく設定する必要があります。技術的な知識が求められるため、初心者にとっては敷居が高いと感じるかもしれません。
コストの増加
複数のVPNサーバーを利用するため、それぞれのサーバーに対して利用料金が発生します。特に、有料のVPNサービスを複数利用する場合、コストが増加する可能性があります。
無料のVPNサービスを組み合わせることもできますが、信頼性や速度に問題があることが多いです。
VPNチェーン(カスケード)で接続する方法
複数のVPNに同時接続する3つの方法
- VPNチェーン(カスケード)
- 仮想マシン(VM)を使用する
- 多重VPNトンネル
今回はVPNチェーン(カスケード)で接続する方法を紹介します。
VPNチェーン(カスケード)は、複数のVPNサーバーを連続的に経由して通信を行う方法です。
一つのVPNサーバーだけを利用するよりもさらに高いレベルのプライバシーとセキュリティを提供することができます。
VPNチェーンの仕組み
最初に、ユーザーのデバイスからVPNクライアントを使って第一のVPNサーバーに接続します。
この接続は通常のVPN接続と同様に暗号化され、ユーザーのIPアドレスが最初のVPNサーバーのIPアドレスに変わります。
第一のVPNサーバーは、そのトラフィックをさらに第二のVPNサーバーに転送します。
この際もトラフィックは暗号化され、今度は第二のVPNサーバーのIPアドレスが外部に表示されます。
セキュリティやプライバシーの要求に応じて、さらに第三、第四のVPNサーバーを経由させることができます。
各サーバーでトラフィックが再度暗号化され、その都度IPアドレスが変わります。
手動設定によるVPNチェーンの方法
VPNチェーンを構築するためには、マルチホップ機能(ダブルVPN、チェーンVPN)を持つVPNが必要です。
この機能は、ユーザーが一度の接続で複数のVPNサーバーを経由することができるように設計されています。
マルチホップVPN機能を提供しているプロバイダーはいくつかありますが、その中でも特に有名なものは以下の2つです。
NordVPN
最初のVPN(NordVPN)接続の設定
アプリ内で希望のサーバーを選択し、「クイックコネクト」ボタンをクリックして接続を確立します。
二番目のVPN(Surfshark)接続の設定
二番目のVPN接続用に、新しい仮想ネットワークインターフェース(TUN/TAPデバイス)を設定します。
通常、これは自動的に行われますが、手動設定が必要な場合もあります。
新しい仮想インターフェースを使用して、Surfsharkのサーバーに接続します。Surfsharkアプリで希望のサーバーを選択し、接続します。
この設定を行うためには、ルーティングテーブルを調整し、トラフィックがNordVPNサーバーを経由するように設定する必要があります。以下はその手順です。
Linux環境での手動設定)
具体的な設定例(ステップ1: 最初のVPN接続(NordVPN)
- NordVPNのOpenVPN設定ファイルを取得
- NordVPNの公式ウェブサイトからOpenVPN設定ファイル(例:
first_vpn.ovpn
)をダウンロードします。これは、NordVPNのメンバーエリアから取得できます。
- NordVPNの公式ウェブサイトからOpenVPN設定ファイル(例:
- NordVPNクライアントのインストール
- Linux端末で以下のコマンドを実行して、OpenVPNクライアントをインストールします。
sudo apt-get update sudo apt-get install openvpn
- Linux端末で以下のコマンドを実行して、OpenVPNクライアントをインストールします。
- NordVPNサーバーへの接続
- 以下のコマンドを使用して、NordVPNのサーバーに接続します。
first_vpn.ovpn
はダウンロードした設定ファイルです。sudo openvpn --config /path/to/first_vpn.ovpn
←このコマンドをコピペする
- 以下のコマンドを使用して、NordVPNのサーバーに接続します。
ステップ2: 二番目のVPN接続(Surfshark)
- SurfsharkのOpenVPN設定ファイルを取得
- Surfsharkの公式ウェブサイトからOpenVPN設定ファイル(例:
second_vpn.ovpn
)をダウンロードします。Surfsharkのメンバーエリアから取得できます。
- Surfsharkの公式ウェブサイトからOpenVPN設定ファイル(例:
- 新しいターミナルウィンドウを開き、Surfsharkの設定ファイルを使用して接続
- 新しいターミナルウィンドウを開き、以下のコマンドを使用してSurfsharkのサーバーに接続します。ここで
--dev tun1
は、新しい仮想ネットワークインターフェースを指定します。sudo openvpn --config /path/to/second_vpn.ovpn --dev tun1
←このコマンドをコピペする
- 新しいターミナルウィンドウを開き、以下のコマンドを使用してSurfsharkのサーバーに接続します。ここで
- ルーティングの設定
- Surfsharkサーバーへの接続がNordVPNサーバー経由で行われるようにルーティングを設定します。以下のコマンドを実行して、二番目のVPNサーバーのIPアドレスが最初のVPN経由でアクセスされるようにします。
sudo ip route add <second_vpn_server_ip> via <first_vpn_server_ip> dev tun0
<second_vpn_server_ip>
および<first_vpn_server_ip>
は、それぞれSurfsharkとNordVPNのサーバーIPアドレスに置き換えます。
- Surfsharkサーバーへの接続がNordVPNサーバー経由で行われるようにルーティングを設定します。以下のコマンドを実行して、二番目のVPNサーバーのIPアドレスが最初のVPN経由でアクセスされるようにします。
追加のVPNサーバーをチェーンに追加する場合
追加の仮想インターフェースの設定
- 三番目以降のVPN接続
- 三番目のVPN接続についても同様に、仮想ネットワークインターフェースを設定し、ルーティングを設定します。例えば、三番目のVPN設定ファイル(
third_vpn.ovpn
)を使用して接続する場合:sudo openvpn --config /path/to/third_vpn.ovpn --dev tun2
- 三番目のVPN接続についても同様に、仮想ネットワークインターフェースを設定し、ルーティングを設定します。例えば、三番目のVPN設定ファイル(
- ルーティングの設定
- 三番目のVPNサーバーのIPアドレスが、二番目のVPN経由でアクセスされるように設定します。
sudo ip route add <third_vpn_server_ip> via <second_vpn_server_ip> dev tun1
- 三番目のVPNサーバーのIPアドレスが、二番目のVPN経由でアクセスされるように設定します。
Linux環境とは
Linux環境とは、Linuxオペレーティングシステム(OS)を使用するコンピュータやサーバーのことを指します。
Linuxは、オープンソースで無料で利用できるOSであり、多くのディストリビューション(バージョン)があります。
例えば、Ubuntu、Fedora、Debian、CentOSなどが有名です。
Linux環境は、サーバー管理、ソフトウェア開発、セキュリティ、ネットワーク管理など、さまざまな用途に広く使われています。
Linuxの特徴
Linuxはオープンソースソフトウェアであり、ソースコードは公開されています。
誰でも自由にソースコードを閲覧、変更、配布することが可能です。世界中の開発者が協力してバグ修正や機能追加を行え、常に最新の状態に保たれています。
オープンソースの利点はセキュリティが向上し、コストが抑えられる点が挙げられます。
Linuxには数多くのディストリビューションがあり、それぞれ異なる目的やユーザー層に向けて設計されています。
たとえば、Ubuntuは初心者にも使いやすいディストリビューションです。
一方、CentOSは企業向けの安定性とセキュリティを重視しており、商用利用に適しています。
Linuxの使用方法
Linuxを使用するためには、ディストリビューションの公式ウェブサイトからインストール用のISOファイルをダウンロードします。
インストール方法
ダウンロードしたISOファイルをUSBフラッシュドライブやDVDに書き込みます。
- Rufus(Windows向け):
- Rufusを公式サイトからダウンロードし、実行します。
- USBドライブを選択し、ダウンロードしたISOファイルを指定して「スタート」をクリックします。
- Balena Etcher(Mac向け):
- Balena Etcherを公式サイトからダウンロードし、インストールします。
- Etcherを起動し、ISOファイルを選択、USBドライブを指定して「Flash!」をクリックします。
パソコンを再起動し、BIOS/UEFI設定に入り、USBドライブから起動するように設定します。
インストールメディアから起動すると、インストーラーが表示されます。
指示に従ってインストールを進めます。パーティションの設定やユーザー情報の入力などがあります。
基本的な操作
Linuxの基本的な操作には、コマンドラインインターフェース(CLI)を使用することが一般的です。以下にいくつかの基本的なコマンドを紹介します。
- ls:
- ディレクトリの内容を一覧表示します。
ls
- cd:
- ディレクトリを変更します。
cd /path/to/directory
- sudo:
- 管理者権限でコマンドを実行します。
sudo apt-get update
- apt-get:
- パッケージのインストール、アップデート、削除を行います(Debian系ディストリビューションの場合)。
sudo apt-get install package-name
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